創業時の仲間は、企業成長に遅れてゆく

つらいが楽しい創業期

どんな業種でも、事業の

立ち上げ時の最初のメン

バーは、創業者と共に、

同じ苦楽を味わってきました。

明日の見通しも立たない状況の中で、ただひたすら会社が潰れ

ないように懸命に、汗水垂らして働いてきました。

まさに、生みの苦しみです。

新規採用する資金余裕もないので、皆長時間労働は当たり前。

毎週の徹夜勤務ですら、珍しくありません。

ブラック企業とは違い、年間の休日日数が公表できないくらい

少ない会社でも皆燃えていました。

創業者とそのメンバーは特別な仲間たちです。

現代のベンチャー企業のそのものです。

創業メンバーは“戦友”のようなもの

資金繰りに追われ、不眠不休で頑張った社員は、社長にとって

かけがえのない仲間以上の存在です。

みな同じ釜の飯食った仲間達は、社長の言わんとすることは

すぐ理解する以心伝心の間柄です。

ですから、彼ら創業時メンバーの中でも貢献者ほど、その後、

企業成長のたびに目覚ましい昇進をします。

企業成長がもたらす情報格差

しかし、徐々に成長の階段を駆け上がるとき、社長側近の実力者

たちのポジションに変化が生じます。

年商が10億円から100億円になり、さらに1000億円になって

ゆく急速な成長であればなおさらです。

例えば、ある仲間は部長で転職し、またあるメンバーは役員で

退職します。

まるで櫛の歯が欠けるように1人、また1人と伝説的な実力者が

消えてゆきます。

社長の片腕として現在まで重鎮として残る仲間は例外的な

存在です。

もちろん、創業時の戦友的な古株実力者を重用し続ける企業も

少なくはありません。

例え、“人情”や“功績”が尊重されている社風の企業でも、遅れを

取る側近幹部は出てきます。

なぜだと思われますか。

見える世界が変わってくる

1つの大きな要因は、社長が見ている風景と、幹部社員が見て

いる風景が、企業成長とともに違ってくるからです。
(もちろん、他にも様々な理由がありますが)

企業が成長してゆくと、創業者の世界が徐々に広がってゆきます。

業績が伸び、銀行の信用度が上がり、取引先からも重視される。

時には、地元の名士として著名人になったりもします。

こうした脚光を浴びる段階では、創業者の交際範囲が突然

広がり、多様な人脈が出来て、たくさんの情報が入ってきます。

異業種の経営者との交流も活発化します。

経営者の成長に追いつけるか

ちっぽけな零細企業の段階では見たことも聞いたこともない

広い世界が眼前に広がるからです。

社長も一層意欲が刺激され、経営に夢中になります。

これは、読書による勉強とは違う種類の社会勉強です。

社内で黙々と頑張っている創業メンバーはこのことに気づか

ないことが多いのです。

彼らの見ている風景は、零細企業や中小企業の時代の風景と

あまり変わらないのです。

「最近うちの社長は言うことが変わってきたな」

こうして、創業者と創業メンバーとの間に認識ギャップが

生じます。

このギャップは、年とともに徐々に大きくなってゆきます。

全財産を賭けた創業者の意識

以上のことは、成長期にある企業で共通に見られる歴史です。

どちらに問題があるかということではありません。

創業時の幹部が、創業者の成長に追いつけなくなったという

ことです。

「まあ、こんなものでいいか」と慢心すると世界が狭くなります。

社員は、経営者の成長を見ると同時に、自分の視野も広げる

必要があります。

経営者の成長意欲が、会社の成長の原動力です。