風化しつつある部長職の本質

組織をけん引する部長職

部長は、単に1つの部署の責任

者であるだけではありません。

トップの意向を知ると同時に

現場の目利きであり、業務プ

ロセスを熟知して、他部署との調整も行い、部下のスキルレベルもチェッ

クします。

コストや時間の管理も守備範囲です。

部長が取締役になっている例は珍しくありません。

現場に対する決定権を持ち、同時に、経営陣の一角を占める。

現場も経営も分かっている。

部長職は組織の重要な束ね役です。

部長が遅れている

「組織は時代に遅れる」と申しました。

この典型例が、部長職ではないでしょうか。

なぜ「部長は時代に遅れるのか」。

創業期、成長期、安定期、停滞期、不振期と、様々な市場環境の中で企業

は生き抜いてきました。

この間に、人事制度や採用基準も変わってきました。

しかしながら実態は、部長適任者が乏しくなっている傾向があります。

競争環境が厳しい時代になるほど、経営と現場の両面での決定権を持つ

実質的な部長機能が、どこも戦力不足なのです。

成長企業にも力量不足の部長さんが、いまだに残っている状況です。

潜在的な“部長不足”の時代が続いているといえます。

もちろん、企業規模や業種によって事情は異なります。

本来はマルチな役割

部長は現場と経営をつなぐ重要な機能が求められます。

実質的には組織内の多能工です。

問題は、この2つの職能のうち、どちらか1つしか意識していない部長が

多く、どちらも不十分という事例もあります。

従来型部長、あるいは古いタイプの部長といえます。

これらの方々が時代に置き去りになってゆけば組織の活力は減退します。

数字の解釈が試金石

従来型部長に共通なのは、その多くが数字を語れない点です。

実績数字を見て、そこから問題やチャンスを発掘できないのです。

部下に事前に、数字を整理してもらっても、会議の場では数字にはあまり

触れません。

数字が読めなくても、部長になれるのは組織の摩訶不思議です。

仕事のプロセス改革で、部長が最大のボトルネックになっている可能性も

あります。

視線が常に内側を向き、業界や会社全体は視野から外れています。

部長の職務の明確化

部長になって精進しないのは年齢とは無関係です。

年功型の古い価値観で、根拠も実績もなく部長になった場合もあります。

反対に、能力があって若くして部長に抜擢されたために錯覚し、誤った権

力志向に走った例もあります。

年齢ではなく、自己成長に対する欲求の強さの違いでしょう。

若くて優秀だった課長が、部長になった時から学ぶことを忘れがちです。

「部下は上司の背中を見て学ぶ」といわれます。

従来型の上司には部下の育成は荷が重いのではないでしょうか。

最後に繰り返します。

本物の部長は、現場も熟知し、経営する観点も備えています。

部長職の次の段階は、経営陣だからです。