ライフスタイルデータは何も教えてくれない

2種類のマーケットデータ

一般に市場データとは以下の2つに大別

できます。

第1はライフスタイル集団別のデータ。

(ライフスタイル・データ)

第2は販売実績データ。(又は、売上デ

ータ)

前者は想定市場の性格を整理すること

で、後者は過去の販売実績に基づく市場規模を予測します。

ここでは、第1のライフスタイルデータの危険性を説明します。

生活者を生活様式(=ライフスタイル)で分類できるのか

ライフスタイル調査は、客層データを収集する典型的な方法です。

例えば、ショッピングセンターを建設する時、以下のような発想でマーケ

ットリサーチを行います。

対象市場における、年齢別の人口構成比、男女比率、既婚率、平均家族人

数、平均収入、職業別人口比率、居住地域、等々。

これらは既に市場調査における主流のデータ項目となっています。

この発想は、メーカーの新商品開発の際にも行われます。

人々の集まりがマーケットなので、その内訳を“対象住民の属性”別に分類し

て、市場を区分する考え方です。

つまり、住民の属性別データを集めて、市場規模を想定するのです。

ライフスタイルデータとは、職業、年齢、居住地などの、人々の社会的な

特性別にデータを収集・分類するために行います。

想定消費者をイメージ化するために、ライフスタイルデータがあるといっ

てよいでしょう。

古くからある手法

「ヤング・ミセス」、「ビジネス・シルバー」、「ミニマル・シングル」・・・。

何だかよくわからないですね。

困ったもんです。

これらは、個々のライフスタイル集団に対するイメージを分類名にした

事例です。

1つひとつがマーケット区分になります。

ただし、実際に使用されたネーミングではありません。

こういう発想には気を付けてください。

カタカナを使えば、信憑性があると思っているのでしょう。

年齢層や収入や生活の価値観などの共通性で、ある種のライフスタイル

集団を想定して、それらに市場としてのラベルを付けているのです。

「ヤング・ミセス」などは、仮説としての架空市場名なのです。

ここには大きな間違いがあります。

果たして、同じ年齢層で、同じような職業で、似たような環境で生活して

いる人々は、1つの市場を形成しているのか、ということです。

ここを認めてしまえば、そのグループに属する人々はみな同じようなモノ

を買う傾向があるという結論に持って行かれます。

従って、同一のライフスタイル集団には同じような購買傾向があるに違い

ないという前提が誤っているということです。

これは昔からあるクラシックな市場分析の欠点です。

数字で説明できない?

残念なことですが、この種のライフスタイルデータは、実際にはほとんど

役に立ちません。

最大の致命的な弱点は、ライフスタイル集団別の市場規模を数値化できな

いことです。

例えば、その地域の「アーバン・ミセス」の年間需要額や平均客数は、算

出できません。

ライフスタイル集団の市場規模も、成長率も数字で示されることはあり

ません。

元々、信頼に足るデータではないので、商業施設の完成後、仮説と結果が

どれだけ落差があったかを検証することもできません。

“ライフスタイル別市場”というのが、単なる観念でしかないからです。

要するに、ライフスタイルに基づくビジネス提案はほとんど成功していな

いということです。

なぜか?

ライフスタイルと消費スタイルは違う

特定のライフスタイル別集団は、必ずしも似たような購買行動をとるわけ

ではないからです。

同じ職種でも支持する政党や食の趣味が違うようなものです。

確かに、同じような属性を持つ集団は似たようなライフスタイルを示す

可能性はあります。

ですが、その集団の購買行動は1つのパターンに収れんするわけではない

ということです。

お客に対するプロファイリング(想定購買者像)で、ビジネスは成功する

ほど易しいものではありません。

疑問に答えてくれない

マーケット分析といった時、最初にライフスタイルデータが出てきたなら

要注意です。

そのほとんどは、無知と間違いに満ちています。

もちろん、ライフスタイル分析が無意味だといっているわけではありま

せん。

それが、市場規模を推計し、個別の商品(サービス)に対して推定売上高

を数字で示せれば読む価値があるでしょう。

しかし、それはほとんど期待できないでしょう。

市場規模やその時系列データが算出できるとは思えないからです。

ここでは、ライススタイルデータのいかがわしさを説明しました。

反対に、最も実用的なのは販売データに基づく市場データです。

実績こそ実在する数字です。

これについては別記事で説明いたします。