組織はなぜ時代に遅れるのか

新しい提案に反対する旧世代の人々

会議では、反対意見は珍しく

ありません。

「投資が大き過ぎるから無理

だ」、「コストが掛かりすぎる

からダメだ」、

「現状のシステムではできな

い」、「自社の企業規模では無理」等々。

新規事業への参入や新商品開発の提案に対して、経営陣から出てくる回答

です。

もちろん、こうした意見が正解であるケースもあります。

しかしながら、この回答では納得しない方々のほうが圧倒的多数派を占め

る場合もあります。

“経営陣”対“一般社員”という構図に見えるかもしれません。

しかし、ここでの本質的な問題は世代間の価値観の違いにあります。

まだ十分認識されていない、新旧世代別の体験の違いが隠れているとみる

べきです。

経営者が成長した時期こそ輝いて見える

現経営者(経営陣)は10年ほど前の、彼の「優秀だった時代」の業績と価

値観から離れられません。

彼の部長時代、あるいは、課長時代にたくさんの成功体験を積み上げてき

たからです。

10年前なら今より10歳若く、多くの経営者は実務のリーダーとしての黄金

期だったのではないでしょうか。

ビジネスの第一線でバリバリの現役として、大活躍していたと想像できます。

その成功体験が、彼のビジネス価値観を不変なものとして刷り込みます。

大きな成果を上げられたのも、その時代特有のマーケットがあったからで

す。もちろん、消費者感覚に敏感で、対応力も素早く、有効な行動といっ

た個人努力があったことも付け加えておきます。

要するに、彼らが最も輝かしく情熱的に働いた時期に大きな業績を上げら

れたのは、自分がよく知っている“時代”だったからということです。

今日の幹部への道を切り開いたのも、そこがポイントです。

成長時代に吸った空気こそが、後にその時代の価値観を生み出します。

昭和の人、平成の人、といった表現は適切です。

過去の空気を吸って成長したとしても、10年も経つと業界に充満する空気も変わってきます。

10光年前の星の姿

全ての経営者が、10年前の成功体験に身も心も染まっているわけではあり

ません。

黄金期に身についた習慣的な思考、行動、期待、前提等を、ついつい心の

拠り所にしてしまうということです。

体は現在にいるが、感覚は10年前のままということです。

現場から離れれば、事業感覚は古くなります。

場合によっては、20年、30年前の空気を吸い続けています。

頭の中の時計は20-30年間止まったままです。

明治、大正、昭和というそれぞれの時代に、社会人として育ち、空気を吸

い、どっぷり体験したことは頭の芯に後まで残ります。

気づかないだけに厄介です。無視でません。

これが、組織が時代に遅れる根本的な理由です。

常に成長していないと、発想の“先祖返り”に陥ります。

経営者が時代に遅れるということ

会社が時代に遅れるのではなく、直接的には経営者が後れを取ってしまう

のです。

正確に言えば、過去の体験が現代に通用しないことが多くなって行くと

いうことです。

経営者が培った過去の能力のままでは時代に遅れるのです。

社長だけでなくすべての管理職と全社員にも当てはまります。

市場が変化するのは、新しい参入者が新しい方法論で挑むからです。

常に、マーケットチャンスを追い求める

こうした、気づかないうちに組織が老朽化してしまうことに対して、どう

すればよいのか。

新たなマーケットチャンスを探すことです。

市場の変化、事業形態の修正、成長企業の方法、若手リーダーの育成、商

品開発の刷新、等々。

従来の仕事の延長では成し遂げられないことばかりです。

新しい仕事の仕方を決めなければなりません。

新規のチャレンジ課題を設定することで、組織の全てが問い直されます。