コスト管理だけしか知らないサラリーマン経営者

陳腐な「経営のスリム化」をいつまで続けるのか?

新任経営者の評価ポイントは、

その方針の中身にあります。

そこに“コスト管理”が強調され

ているなら、その経営者は危険

です。

コスト管理とは、単なるコスト

カットを意味しているからです。

一見、コストカットは合理的に見えますが、どの企業も既に長い間、多方

面でコストカットを実施してきているのです。

手を付けるべき問題はそこではありません。

ここは経営の視野を広げる時です。

コスト問題以前に取り組むべき大きな宿題があります。

それは、市場シェアの拡大です。

または、事業成長とか売上規模の拡大といってもよいでしょう。

コストを支払うための資金源としてのキャッシュを、どうやってたくさん

稼ぐのか。

”稼ぎ””が増えなくては、”管理”は成り立ちません。

利益の源泉である“売上”のアップ策は、常に経営の中心課題なのです。

サラリーマン経営の共通点

業務管理、在庫管理、時間管理、財務管理、交通費管理、等々。

業務の中身の一挙手一投足を緻密に測定、監督して、これによりコスト

カットを徹底する。

こんなことで企業経営ができる時代はすでに終わっています。

しかしながら、今でもこの発想は多くの経営者の頭に中に根強く残って

います。

なぜなら、多くのサラリーマン経営者はコストカットしか知らないから

です。先輩経営者が皆やっていたことを、そのまま真似ているだけです。

誰でもできるやさしい経営です。

“コスト”がどうやって支払われるかを考えたことがないのでしょう。

コストの源泉である売上とかシェア率を十分伸ばせなければ、コストは

払えません。

より多くの売上を実現し、より多くのキャッシュを稼ぐ。

これが経営者の本業です。

本業が認識できないサラリーマン経営者は、コスト管理以外のところに

ある重要な経営行為が視野に入っていません。

行き詰まりから会社を救う方法論

新製品開発、商品ラインの拡大、事業転換、新市場の開拓、異分野への

参入、有望企業の買収、新チャネルの開拓、等々。

これらが、売上や市場シェアを継続して伸ばすための経営行為です。

誰でもできる“管理”や“監督”とは全く異質な方法論の世界です。

これらを経営戦略といいます。

新しい経営戦略こそ、最初に新任経営者が鮮明に打ち出さなくてはなら

ない項目です。

戦略とは投資効果の最大化を実現する方法論です。

既存の事業形態のままでは、やがて成長の限界に至ります。

この限界点が来る前に打つべき手が戦略です。

新製品開発、商品ラインの拡大、事業転換、新市場の開拓、異分野への

参入、有望企業の買収、新チャネルの開拓、等々。

こうした難しい課題に取り組まないと、本来の“経営”にはならないでしょ

う。

その問題意識が乏しい経営者が“サラリーマン経営者”なのです。

経営者の立ち位置

コスト管理は、新しい需要を生み出すでしょうか?

コストカットは、新しいマーケットを創造できるのでしょうか。

無理な相談です。

それは戦略ではなく、単なるテクニックの問題だからです。

もちろん、管理業務とテクニックは不可欠です。

管理技術がなければ組織は成り立ちません。

しかし、管理とは単なるスリム化業務でしかないのです。

社長の仕事ではありません。

せいぜい係長の仕事でしょう。

何も新しい果実(売上)を生み出さない仕事が“経営管理”なのです。

企業の付加価値は戦略によって生み出されます。

戦略を見失い、管理業務だけを経営だと錯覚しているなら、その経営者は

会社にとって危険ではないでしょうか。