現実の経営は“利益率”よりも“利益額”で

“利益率”最優先は過去の経営

通常、利益管理という時の利益とは“率”を指します。

利益“率”です。

通常は粗利益率、または、営業利益

率を指します。

売上に対して何パーセントの利益を

上げたのか。

ここで会社の収益力が測られるからです。

経営者の腕前は目標”利益率”の達成力とされています。

多くの企業では、これらの利益率を目標値として設定し、その実

現に向けて様々な実務が行われます。

予算の達成度も、売上以上に、最終的には利益率目標に達したか

どうかで判断されます。

このため売上予算よりも利益率予算のほうが重視されているケース

は珍しくありません。

実際に売上予算を達成したのに、荒利益率の予算が未達だった

ために担当者がマイナス評価を受けたケースもあります。

これは、本当はおかしな話です。

利益率はキャッシュではない

しかしながら、利益“率”目標を実現することが経営のすべてでは

ありません。

会社経営に必要な支出について考えてみましょう。

会社は売上を上げるために、毎月様々な費用(人件費、輸送費、

販促費など)を支払わなければなりません。

この費用は「販売費、及び、一般管理費(販管費)」と呼ばれま

す。販管費は現金(キャッシュ)で支払われます。

このキャッシュの源泉は荒利益ですが、正確に言えば荒利

益“額”です。

必要な販管費を上回る荒利益“額”をどれだけ獲得すればよいの

か。

ここが、大事なポイントです。

売上よりも利益率を優先すると、たとえ利益“率”目標を達成して

も必要な荒利益額が残らないケースも生じます。(売上×利益率

=利益額)

ここが「利益率優先経営」の盲点です。

経営で最重要なのは、費用を超える十分なキャッシュを獲得する

ことです。必要な荒利益“額”が得られなければ経営はできませ

ん。

“率”が何パーセントであろうと、“キャッシュ”がたくさん残れば

先行投資もできるし、資金繰りも楽になり、株主配当も出せま

す。

毎年、たっぷりキャッシュが残らなければ、会社の収益性や安定

性は脆弱だということです。

すなわち、キャッシュとは利益“額”のことです。

競争時代におけるシェア率の重要性

「利益率優先経営」は昔のバブル経済の産物です。

バブル経済とは、マーケットが需要過剰の状態です。

自動的に売上が伸びた時代だったので、利益率を管理することだ

けでも経営は成立した時代です。

いうまでもなく、現在はそうはいきません。

競争環境が激化し、既存市場も伸びが期待できません。

厳しい状況ですが、どんな時代でもシェア率が最優先されます。

売上を落とすということは、客数を減らし、販売数量を低下さ

せ、最終的には市場シェア率を落とすことを意味します。

つまり、このような時代に依然として「利益率優先経営」を続けていると、

客数が減少し、モノが売れ残り、市場での存在感がどんどん縮小

してゆくということです。

サラリーマン経営者は多くの場合、荒利益“率”経営が染みついて

います。

ところが現実には、荒利益“率”にこだわれば、シェアを落とし、

売上を落とし、その結果荒利益“額”までも低下させます。

キャッシュを毎年潤沢に稼ぐことから今日の経営は始まります。