平均単価を追いかけろ

練習問題 : 単価変動からチャンスを発見する

下記の表から、売上アップにつながりそうな提案をして下さい。

店舗・営業所 ①売上高 ②販売数量
東京 7,000,000 7,000
神奈川 5,000,000 5,500
大阪府 4,000,000 4,100
愛知 3,500,000 3,800
埼玉 3,300,000 3,700
千葉 3,000,000 2,800
兵庫 2,700,000 2,600
北海 2,500,000 2,200
福岡 2,400,000 2,100
静岡 1,800,000 1,500

実際の販売データには、他に様々なデータが含まれています。

ここでは、焦点を単純化するために①売上と②販売数量だけを

抜きだしました。

その焦点とは”平均単価”です。

平均単価は”売上”÷”数量”です。

上の表では①÷②となります。

平均単価の欄を追加する

実際に平均単価を計算して第3の項目を追加したのが次の表です。

店舗・営業所 ①売上高 ②販売数量 ③平均単価
東京 7,000,000 7,000 1,000
神奈川 5,000,000 5,500 909
大阪府 4,000,000 4,100 976
愛知 3,500,000 3,800 921
埼玉 3,300,000 3,700 892
千葉 3,000,000 2,800 1,071
兵庫 2,700,000 2,600 1,038
北海 2,500,000 2,200 1,136
福岡 2,400,000 2,100 1,143
静岡 1,800,000 1,500 1,200
合計 35,200,000 35,300 997

さて、ここで何かお気づきになりますか。

これだけではデータ不足の感がしますが、ここからでもいくつかの

問題発見の切り口を見つけることができます。

例えば、売上上位から並べた各店舗(又は営業所)の平均単価実績を

比較してみるとバラツキがあります。

ただし、単価実績にバラツキがあるのは普通であり自然です。

問題はバラツキの程度です。

ここでの事例データは通常の感覚では無視できない大きなバラツキに

なっています。

全店舗の総平均単価が997円であるのに対し、最高値は静岡店の120%、

最低値はさいたま店の89%。

上に20%、下に10%以上のブレがあります。

この月はいったい何があったのでしょうか。

あるいは、何がなかったのでしょうか。

全社平均の-10%~+20%もの上下変動は、要因分析する必要があります。

業界によってはもっと小さな変動でも検討対象になります。

他にも、平均単価の前年比や対前月比をみても、問題数値が出てくる

かもしれません。

平均単価の変化は、販売データを分析する重要な項目の1つです。

単価変動はなぜ発生するのか

平均単価の主要な変動要因は大別すると3つあります。

(1)相場変動

(2)予測できない需要変化

(3)競争環境の変化

相場変動

生鮮食品を想定すると分かると思います。

例えば、ほうれん草は毎週、又は、毎月価格は変動します。

工業製品ではないので、計画的に生産できないからです。

この他、野菜、果物、魚、肉などや、天然資源(石油、石炭、鉄鉱石)など、

出荷価格が変わることで平均単価が変動する商品分野はすべてそうです。

予測できない需要変化

新商品の中でも特にヒットしたアイテムは、その典型です。

ヒット商品は通常、売上と同時に平均単価も引き上げます。

ヒット商品は値下げすることなく販売できるからです。

メーカーが定期的に新商品を投入するのはこのためです。

この他、ある種のブームが起こり突出して売れるモノが出てきたり、

あるいは、災害時には生活必需品へのニーズが急激に高まります。

突発的な需要構造の変化で、特定商品に需要が集中して、その結果、

平均単価が変動するパターンです。

競争環境の変化

上記の2つの原因は予測も計画もほとんどできないので、ここではこれ以上

触れません。

平均単価を日常業務で活用する時、大切なのは第3の競争環境の変化です。

一般に、競争相手が増えるほど平均単価は下がります。

同じ、又は類似商品の価格競争が激しくなれば、全体に価格が徐々に下がり

その結果、平均単価も下落します。

反対に、ライバル企業が少ない寡占化された分野では価格は安定していて、

あまり変動しません。

固定的な価格体系の事業分野は、無風に近く、結果的に平均単価も

固定的でも通用します。

つまり、特定の商品分野における平均単価の動向を追いかけていれば、

ある程度、競争状態の変化の度合いも推測できるということです。

そこが、例題の主旨です。

さて、例題の実績表を見て、平均単価変動の大小を比べた時、どのような

要因分析ができるでしょう。

平均単価変動で店や事業所の競争力を判定する

平均単価の変動を見て、着目すべき点はいくつかありますが、ここでは最も

基礎的な販売数量との相関関係を見てゆきましょう。

平均単価が下がった店は全体として「安売り」をしたことが濃厚です。

もちろん、その月だけ格別安い原価で仕入れた場合もある

かもしれませんが、安売りをした可能性が高いです。

およそ、8割以上のケースで競合上やむなく低価格で販売した結果、平均

単価ダウンに至ったといってもよいでしょう。

販売数量アップが目的

問題は低価格で売った時、販売数量が伸びたのかという点です。

経験的に言うと、販売数量が伸びれば、たいてい売上高も伸びます。

平均単価ダウン→販売数量アップ→売上高アップ。

これが、単価引き下げの波及効果であり、シナリオです。

単価下げは数量増加のための手段であり、数量増加は売上増のための手段

として位置付けるのが販売の基本です。

業績アップは、数量アップから始めます。

これは暗黙の営業システムといってもよいでしょう。

従って、単価ダウンした部門は、必ず数量がどれだけ増えたかを確認します。

平均単価は無意味に下がるものではなく、また、なぜか結果的に下がって

しまうものでもありません。

意識的か、無意識的に、どこかの段階、何かの商品で価格を下げているのです。

例題の表では、平均単価の下げ幅の大きい店舗の数量変化と売り上げ変化を

チェックすべきなのです。

平均単価の下げ幅な大きいにも関わらず、数量増加も売り上げ増加も乏しい

なら、どこに問題があったのか。

逆に、平均単価ダウンが小さいにも関わらず、数量実績も売上実績も顕著

な店はないのか。

多くのケースを見てゆくと、中には単価は横ばいでも実績アップがみられる

場合も出てきます。

平均単価ダウン→販売数量アップ→売上アップ、という基本形には収まらない

ケースをたくさん見るでしょう。

それは、まだまだ仕事の改善余地があるということです。

平均単価は、すべてを説明するわけではありませんが、問題がどこに

ありそうなのかを探る有効なツールなのです。