スケールメリットの落とし穴

スケールメリットって何?

事業拡大の過程では、成長によ

る果実(メリット)がたくさん

得られます。

原価の低減、原材料確保の多角

化、資金調達金利、M&A、有能な人材、知名度のアップ、等々。

これらをまとめてスケールメリットと呼びます。

スケールは「大量生産」、「大量販売」、「大規模化」という意味です。

事業のスケール(規模)が拡大するにつれて、経営上のメリットが増えて

ゆくことです。

コストメリット

最大のメリットは運営コストが相対的に下がってゆくことです。

スケールメリットは、ズバリ、コストメリットということができます。

営業利益=売上-原価-販管費(コスト)

コストが下がることは販管費(販売・管理費用)が下がることです。

すると、同じ商品でも安く売れます。

荒利益率も高まって、同時に、価格競争力も高まります。

標準化のメリットとデメリット

コストメリットを追求する際、最も古典的な手法は標準化です。

主にオペレーション(現場運営)の標準化です。

製造する製品や、販売商品・サービスの均質化を実現するために、作業の

システム化、画一化を行うことです。

こうすると従業員も管理者も仕事の構図と重点を共有できます。

未経験者でも、最も少ない人員で、結果として品質にばらつきがない商

品・サービスを提供する。

最小コストで、これを実現しようとするのが標準化の目的です。

業界によっては、工場建設や店舗開発の段階でレイアウトや使用設備まで

標準化・画一化するケースは珍しくありません。

極端に言うと、設計図を1枚で済ませれば、設計コストも最小化できると

いうことです

画一化を補完するのは人

スケールメリットは、一見、良いことだらけに見えます。

しかし、最も見落としているデメリットは、人員の戦力化なのです。

従業員のスキルや仕事の質が、会社の成長についてゆかない。

従って、抜きんでたハイクオリティな商品やサービスは苦手です。

ここに、標準化の落とし穴があります。

これが、今までの機械的な“標準化”を画一的にとらえて、信奉してきた経営

者は気づきません。

企業の急拡大時には、必ずこの問題は出てきます。

教育や現場要員の育成を軽視してきたのではないでしょうか。

スキルを持った従業員の規模が、事業規模に追いつかなかった。

この点は、経営者のスキルや役員のスキルが同様に問われます

これは、業種を超えこれまで共通にみられた現象です。

スキルアップは常に求められる

事業や組織の規模と、現場要員のスキルクオリティの落差に注意を払って

こなかったのでしょう。

人の成長なくして、事業規模拡大はあり得ません。

“人”が明らかに足りなければ、どこかで矛盾が表面化します。

急速成長企業がある時点で、ポッキリとその成長ラインが折れると

き、“人”の問題は経営問題として浮上してきます。

標準化と画一化は一時的なメリットをもたらします。

求められるのは、そのあとのスキルアップです。