「経営」と「マネジメント」の違い

事業経営の両輪

会社は“稼ぐこと”と“やりくり

すること”という2本柱で成り立

っています。

“稼ぐ”とは、製造・販売活動全

般を指し、“やりくりする”とはすべての管理業務を意味します。

フロントエンドとバックオフィスといってもよいでしょう。

お金を稼いで、そのあとで、お金の使い方を決め、使途を管理する。

どんな事業会社も、この2つの柱と2つの順序で成り立っています。

ビジネスは売りから始まる

稼ぐこと。

これは最初に行われる活動です。

売上がなければ仕事は始まりません。

入ってきたお金をどのように使い、利益を残すか。

管理はその後の問題で、稼いだ発生する業務です。

家計も同じこと

家庭でいえば、この2つはお父さんとお母さんの役割に相当します。

お父さんが外で働き収入を得て、そのお金をお母さんが生活のために有効

に管理する。

ここでも2本柱を見て取れます。

もちろん、今ではこの役割分担が逆の場合も多いでしょう。

また、夫婦共稼ぎも珍しくありません。

でも、“稼ぎ”と“やりくり”は生活の両輪であることは、経営と全く同じ構造

です。

“マネジメント”の時代背景

“経営”と“マネジメント”はどこが違うのでしょう。

基本的にはその意味は同じです。

ところが、アメリカ流の近代的な経営論が日本の会社に浸透し始めると、

経営という言葉よりも、なぜかマネジメントいう言葉が多く使われるよう

になりました。

まるで、経営とマネジメントは違うとでもいうように。

マネージするとは?

マネジメントの動詞であるマネージには意外な意味があります。

マネージとは、手持ちの条件で“なんとかかんとか”やりくりして、目的を達

成する“という意味を持っています。

「マネージャー」という言葉の意味も「マネージする人」です。

これぞ経営そのものではないでしょうか。

“売り”に苦労しなかった

マネジメントという言葉が独り歩きし始めたのは、マーケットが変化した

からです。

バブル時代は無理して売らなくても、自動的にモノが売れた時代です。

膨大な規模のマーケットがあった時代です。

勝手にモノが売れたので、稼ぐ活動はそれほど重視されませんでした。

売れることが当たり前だったからです。

ありきたりの“稼ぎ方”でも業績は右肩上がりでした。

基本は、需要過多のマーケットがあったということです。

売れないから、管理に逃げた

ところが、バブル後は状況が一転しました。

バブル経済崩壊以降、経営という言葉とマネジメントという言葉に、ずれ

が出ました。

マ-ケットが縮小し、“売上”の予想が立てにくくなったからです。

「市場は成熟化した」などと1980年代から叫ばれています。

問題はそこではありません。

“売り方”が難しくなったので、その分、経営の重点は“管理”に傾いたことが

大きな問題なのです。

誰でも“経営者”を名乗れる時代に突入しました。

“管理する”は“稼ぐこと”と比べると、何といっても易しいからです。

ここから“マネジメント”という言葉の使用頻度が上がってきました。

マネジメント=経営管理という発想が一般化したのです。

“経営”の中身は変わらない

経営という言葉は従来通り、事業活動の2つの領域をバランスさせて、コン

トロールします。

従来通り、“稼ぐ”と“やりくりする”の両面が守備範囲です。

これに対しマネジメントは、主として“やりくり”のための活動と勝手に曲解

されてきました。

今でも経営者の8割くらいは、単なる“経営管理”をマネジメントと誤解して

います。

どんなカタカナを使おうとも、経営管理は決して経営ではありません。

ここに、2つの意味の使い方の決定的な違いがあります。